「身体知の芸術表現による意識変容」セッションを開催
9月26日、つくば国際会議場において、筑波会議2023の一環として365体育投注図書館情報メディア系 松原 正樹 准教授主催のセッション「身体知の芸術表現による意識変容」が実施されました。本セッションでは、体験型のワークショップが前半に実施され、後半部分で本題目の学術的探求が講演および討議されました。本セッションでは、主催者の松原准教授に加え、以下の方々が登壇されました。
- Dr. Neera Malhotra, Assistant Professor, Portland State University, the United States
- Dr. IMOTO Yuki, Associate Professor, Science and Technology, Keio University, Japan
- Dr. Chiara Robbiano, Associate professor, Philosophy, University College Utrecht, Netherlands
Dr. Malhotra は、オリジナルの「身体知が生み出す意識変容」プログラム“Slow Presence: Mapping the Body!!”を体験型ワークショップとして披露しました。参加者は、Dr. Malhotra の呼びかけに応じて、身体の一部である「手」や「心臓」を通して身体全体で感じる心の変容を動作、ダンス、絵や文章で表現しました。参加者は、心がどこをさまよっているか、どのようなことに気づいたか、自身の外の世界とどのように繋がっているか、自身が心から求めているものは、何なのかを探求するプロセスを体験することができました。
後半の講演では、主催者である松原准教授が、「一人称視点のアプローチ記述から”シアターワーク”を洞察する- 二人称視点との共振モデル」について講演しました。松原准教授は「身体知が生み出す意識変容」のもう一つのユニークな実践プログラムであり、芸術表現による手法を取り込み、多くの共感を得ている小木戸氏のシアターワークの真髄に迫りました。松原准教授によれば、シアターワークは、自身の身体からの声を聞くことで、人としての相互依存性に気づくものであるとのことでした。一人称の視点から二人称の視点を導き出す点が特異的です。二人称の存在は、一人称と自然な共鳴による共創を生み出し、また詩的ヒーリング?プロセスへと導かれます。このボディ?コミュニケーションは、即興的で、また意図したものではないとのことでした。
井本准教授は、協働者または参加者として小木戸氏のシアターワークに参加してきたことから、シアターワークの「身体知が生み出す意識変容」を文化人類学者の視点で調査されました。井本准教授によると、シアターワークの側面は以下のものです。① 規範化された自己を解きほぐし、自身の「核」とつながることを可能としています。② 情動?感覚?内側の声に注意を向けることで世界と共に感じていくスキルを獲得していくプロセスと考えられます。③ ジャッジのない、守られた空間で、記憶と繋がっていくことで、記憶と複数のオントロジーとの再接続が実現されています。井本先生は、日常生活の中で感覚を使い、「思い出す」こと(マインドフルネス)と「調整する」ことの積み重ねが、変容につながるとしています。
哲学者である Dr. Robbiano は、道元禅師の言葉を参照しつつ、教育における「身体知が生み出す意識変容」の実践について述べました。「道元禅師は、私たちが関わるすべての異なる存在を、私たちが共有する世界を調和的に共同創造するために、尊重し理解しようと努め、彼らの言葉を学び、彼らの視点から見る必要がある存在」と説いたとし、我々が存在する空間における身の置き方を語りました。自分自身の経験や知識、コミュニケーション方法、価値の付け方が中立であるわけでも普遍的であるわけでもないことを認識し、何が現実的で価値のあるものかについて異なる概念化や経験に対する知識の謙虚さを培うことの大切さを述べました。すなわち、それは自己を中心とした世界観から、世界の様々な側面に中心を置き換えることです。このような身の処し方を実践するには、常日頃の訓練が重要であることから教育への反映を提案されました。
30~35名が延べ三時間半、最初から最後まで熱心に参画されました。参加者からは、「実践のワークショップで受け取ったものをアカデミックな環境で丁寧に説明して頂けるのはとても新鮮で、新たな気づきと理解を得て見方が変わりました。」「自分自身が模索することで認識が変わっていくプロセスを体験できました。」「答えや気づきは自分の中にあり、そこに集中するための実践を通して実感できました。」等のフィードバックを頂き、多くの共感を得ました。