社会?文化

環境変動が人類の協力の進化を促進した可能性をシミュレーションで提示

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(Image by Shutterstock AIジェネレーター/Shutterstock)
 進化ゲーム理論にもとづくシミュレーションによって、環境変動の激化が協力の進化を促進しうることを示しました。この結果は、中期旧石器時代アフリカの激しい環境変動が人類の認知能力の向上につながったとする変動選択仮説を、社会性の進化の説明にも広げて捉えなおす手がかりになります。

 人類の高度な認知能力や社会性の萌芽は中期旧石器時代のアフリカにあるとされていますが、それらの進化の具体的なメカニズムやプロセスは十分に明らかになっていません。本研究は、この謎を説明する有力な仮説とされる変動選択仮説が、これまで主に個体の能力の進化を対象としていたことに対し、その説明の範囲を社会性の進化にも広げ、環境変動が人類の協力的行動の進化に与えた影響を、進化ゲーム理論に基づくマルチエージェント?シミュレーションによって検証しました。

 本研究では、地域的変動モデルと汎地域的変動モデルという二つのシンプルな環境変動モデルを考案し、地理的に離れた集団間の協力が環境変動によってどのように促進されるかを分析しました。その結果として、地域的変動が貧しい地域の協力者に新たなチャンスを提供し、協力行動の進化を促すメカニズムが明らかになりました。一方、汎地域的変動の効果は弱く、地域間の資源分布が変化しない限り協力の進化には大きく寄与しないことも示されました。

 本研究の成果は、中期旧石器時代のアフリカにおける社会的行動の発生と発展に関する考古学的検証に新しい視点を提供するとともに、現代社会における環境変動や危機が協力行動に及ぼす影響を理解するための手がかりとなることも期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

稲葉 理晃 社会工学学位プログラム(博士後期課程)2年次

システム情報系
秋山 英三 教授

掲載論文

【題名】
Environmental variability promotes the evolution of cooperation among geographically dispersed groups on dynamic networks
(環境変動は地理的に離れたグループ間の動的なネットワークにおける協力の進化を促進する)
【掲載誌】
PLOS Complex Systems
【DOI】
10.1371/journal.pcsy.0000038

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