生物?環境

ホラアナゴキブリの生殖行動と胚発生過程を解明 ~網翅類の進化体系に関する新たな知見~

ホラアナゴキブリ科の一種の卵の蛍光顕微鏡像

(ホラアナゴキブリ科の一種の卵の蛍光顕微鏡像(撮影:藤田麻里))

ゴキブリはとても身近な昆虫ですが、大きさや生態などが全く異なる、いくつかのグループがあります。中でも、ホラアナゴキブリ科というグループは、体長数ミリほどで、触角と脚が細長いという、非常に珍しい体型を有しています。また最近、古生代石炭紀~中世代三畳紀後期から知られている正体不明の化石系統群「Miomoptera」の正体がこのグループである可能性が指摘され、昆虫の進化を理解する上でも重要視されるようになってきました。しかしながら、研究対象の主流は家屋棲のグループで、ゴキブリ類全体としての生態や系統学的な研究はほとんど進んでいません。


今回の研究では、マレーシア産のホラアナゴキブリ科の一種Nocticola sp. を採集?観察し、その配偶行動や産卵行動の特徴を明らかにするとともに、走査型電子顕微鏡や蛍光顕微鏡を用いて、卵構造と胚発生過程を解明しました。その結果、ホラアナゴキブリ科は、ムカシゴキブリ科と系統学的に近縁であることが分かりました。


さらに、ゴキブリ類、カマキリ類、シロアリ類からなる網翅類の発生学的データの比較検討を行いました。ゴキブリ目の胚運動には、胚発生過程で卵内での胚の前後軸が逆転する「胚軸逆転型」と、胚の前後軸の逆転を伴わない「胚軸非逆転型」の2タイプが知られていますが、網翅類全体でみると、「胚軸非逆転型」が基本形であることが明らかとなりました。


本研究成果は、ゴキブリ類の中でも最もミステリアスとされるホラアナゴキブリ科の生殖学的特徴を、世界で初めて明らかしたもので、今後の系統進化学的な議論の進展が期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

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町田 龍一郎 特命教授(山岳科学センター 菅平高原実験所)

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