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日本医師会研究奨励賞
医学医療系 福田 慎一

教職員等

日本医師会医学研究奨励賞(Medical Research Encouragement Prize of The Japan Medical Association)は,日本医学会分科会長,大学院医学系研究科長または大学医学部長?医科大学長,大学附属病院長(本院),関係機関長,都道府県医師会長の推薦で応募され,日本医師会会員で,医学上将来性に富む研究を行っているものに授与されるものである。
本年度は,福田慎一氏(医学医療系講師)が「次世代型偏光感受型光干渉断層計による術後瘢痕化評価」という題で受賞した。
術後の瘢痕?癒着を防ぐことは,外科手術において共通の課題である。緑内障に対する線維柱帯切除術では,手術後に生じる濾過胞の瘢痕化が手術成功の重要な鍵である。マイトマイシンCなどの抗癌剤を用い,線維芽細胞の増殖を抑え,瘢痕化を抑制することで手術の成功率は以前より飛躍的に上昇した。しかし,未だ術後の瘢痕化を定量的に評価する方法は無く,個々の症例に対する抗瘢痕化療法の調整は困難である。
すでに高度に瘢痕化した平坦な濾過胞で,眼圧が上昇した症例では,細隙灯顕微鏡検査で容易に評価可能であるが,いかに初期の瘢痕化を見極めるかが臨床上非常に重要である。
光干渉断層計(OCT)とは,高精度に生体組織の断面を観察できる検査機器である。
近年,OCTを用いて濾過胞の形態から瘢痕化を類推しようという試みがなされているが,通常のOCTでは濾過胞内部の質的性状は詳細に評価出来ない。偏光OCTは,コラーゲン線維の複屈折の変化を検出することで,組織内部の瘢痕化を描出する。
福田氏らは,偏光OCTを用いて線維柱帯切除術患者の術後濾過法の瘢痕化を横断的に検討したところ,眼圧と非常に強い関連を認めた。
さらに偏光OCTを用いて,術後早期に濾過法内部の部分的な瘢痕化を検出した。瘢痕化の定量的な評価により緑内障手術の成功率の向上が期待されるのみならず,近年OCTは冠動脈プローブ?気管支鏡?内視鏡など他科分野への応用が盛んに研究されており,例えば内視鏡への偏光OCTの応用により再手術時の瘢痕化,癒着を事前に評価できることなどが期待される。